竹に根笹 平成元年
風邪の神の押しもどさるる電車の扉
東風遣ればピヨピヨと鳴る青信号
額付きし背へ真ん丸の初明り
学位享く吾子に喝采花三分
母子草妻へ書きおく遺言書
寄り添ふてぼんぼり灯す花辛夷
御陵の彫り字ふかぶか春の雨
たかんなや竹に寝笹といふ家紋
離れ住む子が春風邪を持ち帰る
紫陽花に灯を手向ければ万華鏡
琴の音が発車の合図台風裡
かまつかの暮れゆく行く手九輪塔
奥の院へ立石寺胸突き八丁萩の風
石段競る赤湯女のみこし秋祭
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