一夏の風物詩 昭和六十一年八月
ずぶ濡れを白河夜船かたつむり
殉教の血の噴水を止められず
風鈴や灯油抜かずにある器
馬陸這ふ埃まみれの自転車出す
冷やし蕎麦氷嚙み切る糸切り歯
山車集ふ何てったって馬鹿囃子
蕎麦殻を三片零す梅雨枕
木下闇振り向かず君とおりゃんせ
メロン食ふ食事療法とも知らず
蝙蝠や鉤おさめたる繋ぎ竿
湯上がりの甘露の水を水中花
かなぶんに写経墨次ぐばかりなり
肉眼で辞書引き当てる雲の峰
道譜請にも貌出して道をしへ
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