木の芽風 平成二年
散る紅葉口開けて来る池の鯉
金色に光る鯱の眼冬麗ら
綿虫を誘ふ森の妖精たち
寝転べばわれ宇宙人冬の雲
騒がしき霊界よそに雪降り積む
枯れ銀杏いくさはむなし母子像
三色菫駅の真下は百貨店
刷り上げしばかりの調書木の芽風
連翹の黄に登り来し背を伸ばす
エスカレータ春眠の児と擦れ違ふ
筍の土佐煮といへる歯の当たり
ちぐはぐな一列並び葱坊主
鮎釣りや棒杭のごと動かざる
子の夢を託す笹船泉川
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